ネッツカップ最終戦は毎年恒例の富士スピードウェイにて開催されるトヨタモータースポーツフェスティバルの中で行われる。F1やGTマシンのデモランも行われるこのイベントはトヨタユーザーが数多く集まる一大イベント。ネッツカップも予選、決勝共日曜日に行われるワンデイレースである。CRTAからは、レギュラードライバーの#29石原選手、#36青木選手、今回スポット参戦となった正村選手は13号車、そして今回から新たにカラーリングが施された10号車に、お馴染みの菊地選手と計4台のエントリーとなった。


 今回は全車金曜日からFISCO入り、各車それぞれが各部のチェックやセッティングの確認に余念がない。なかでも1週間前に組み上がったという10号車はニューマシンにありがちな初期トラブル等不安要素も多分にあるため、より入念な確認作業に追われたが、特に目立ったトラブルもなく順調にメニューをこなしていった。
 ところでこの10号車のカラーリング、もうご存じの方も多いかもしれませんが1994年から開催されたJTCCという4ドアセダンのレースでチームシュニッツァーとして参戦したBMWが施していたカラーリングです。ドライバーはあの「スティーブ・ソパー」でゼッケンも10番でした。当時のソパーの走りは強烈でJTCC初年度となった日本に多くの感動を与えてくれました。縁あって今回このカラーリングが復活を遂げたわけですが、ドライバー菊地選手もノリノリで今回ばかりはしっかり手応えを感じていたようでソパー並の走りを約束してくれ、その表情は予選決勝に大きな期待を抱かせてくれました。

 今年のネッツカップは1年を通して実に天気に翻弄されてきた。「スリックか、レインか?」この難しい選択を嫌と言うほど味わい何度と無くドライバー、メカニックを悩ませてくれた。そして、、、ついに最終戦も例に漏れず悩むことになった。まるでこの1年を象徴するかのように路面は濡れ雨は上がっていた・・・
 午前8時30分、20分間の予選開始。路面はウェット、とはいえ若干水しぶきが上がる程度、これなら後半ラインは乾くだろう・・・と読んでCRTAは全車スリックを選択。他チーム、とりわけシリーズ上位陣もスリックを選択するチームが多く、条件は五分のようだ。
 予選開始して間もなく、案の定レインタイヤを選択した少数のチームが上位に名を連ねてきたが、中盤を過ぎる頃からスリック勢が逆転してくるものと思われた・・・。しかし、なかなかスリック勢のタイムが伸びてこない!というかレイン勢に大きく水をあけられている。予想以上に路面は濡れていたようだ。20分間の予選でこれは致命傷!リーダーボードにもあまり見慣れないゼッケンが並び波乱の決勝グリッドが予想された矢先、、、なんと恵みの赤旗中断。

 4台一斉にピットに入り、余裕で全車レインタイヤに交換。再開後の計測は残り11分ということで何とか事なきを得た。当然赤旗中断中に他チームも全てレインタイヤに交換しており、再開後はすぐさまいつもの顔ぶれが上位に並んできた。
 そして#10菊地選手が早々に3番手までジャンプアップ!期待を抱かせたが周りが徐々にタイムを上げていくなか、その後一向にタイムが伸びない。急遽交換したレインタイヤに問題があったようで結局タイムアップできないままズルズルと後退し、予選11番手で終了。#36青木選手は25番手、#29石原選手は28番手、#13正村選手は32番手と今ひとつの結果に終わった。


 ワンデイイベントゆえ予選終了から決勝までのインターバルは3時間しかない。各車一斉に不具合を洗い出し出来ることを精一杯準備し決勝に臨む。

 12時を過ぎた頃、各車が出走前のパドックにクルマを並べ始めた。天気は相変わらずパッとしないが路面はほぼドライ。今度ばかりは迷うことなく全車スリックを装着し、迎えた最終戦 決勝。パドックではいつになく緊張した面もちの菊地選手。今回初の参戦とあって気合がみなぎる正村選手。いつもと変わらず陽気な石原、青木両選手。四者四様で2002年最終レース、フォーメーションラップに入っていった。

 

 そしてグリーンシグナル!#10菊地、#36青木両選手は走行ラインではないイン側グリッドのため、濡れている不利な状態でのスタートとなったがそこは無難にスタートを決め1コーナーへ。1周目を終えてストレートに戻ってきたときには#10は9番手、他の3台もそれぞれに順位を上げて戻ってきた。

 序盤の激しいせめぎ合いは随所に見られ毎週順位を入れ替える好バトル。6周目には上位陣の混乱に乗じて#10は6番手に浮上した。しかし中盤あたりから各車徐々に異変が発生する。まず#10菊地選手はピットで見ていても明らかにストレートスピードが遅い!それは接触でリアバンパーを引きずりまるでゼロヨンのパラシュート状態になっている前車のスリップにも入れない状態。何かがおかしい!
 一方、#29石原選手は今季最高のバトルを展開し順調に周回を重ねていた矢先、突如ラップが落ちて順位を落とした。その後は単独走行となってしまったが、タイムは元に戻っている。何かがおかしい!そして#36青木選手、着実に1台ずつ前車をパスし15位まで順位を上げるというやはり今季ベストレースを展開していたが、突如ストレートでアクセルを戻す!?という一見投げやりな行為に出た。やはり何かがおかしい!
 ピットで首をかしげるメカニック達、ピットに向かって首をかしげるドライバー達。しかしドライバー達はみんな懸命に走り続けている!何かトラブルを抱えているのは誰もが承知していた。そして迎えたゴール。

 #10は最後まで伸びないストレートスピードをテクニックで懸命にカバー、(のちにエンジントラブルだったことが判明)前車のリタイヤもあったが見事5位でフィニッシュさせた。リザルトのベストラップを見ても他車より明らかに遅いのは明白で、結果には表れなかったが菊地選手の巧さが際立ったレースだった。レース後の「決して速いエンジンじゃなくて良い。普通のエンジンさえあれば・・・」の一言がとても印象的だった。
 #36青木選手は結局19位まで順位を下げたところでフィニッシュ。トラブルの原因はなんと予選時にグリルに貼ったガムテープのはがし忘れによるオーバーヒート!わざとかどうかは敏腕メカニック「JYUNちゃん」本人に聞いてみないと定かではない・・・。(笑)

 #29石原選手のトラブルはすでに掲示板でも動画で報告されている通り、キルスイッチを触ってしまったことによるエンジンカットオフ!気合いを入れすぎてしまったのか3速にシフトアップしたとき、勢い余ってあらぬところにまで手を伸ばしてしまった模様。信じられないトラブルだが今まで一度も出なかった現象が最終戦のしかも決勝中に出てしまうあたり、レースの奥深さをあらためて再認識させる結果となった。そして#13正村選手はアルテッツァ初戦ながらも無事走り切り23位でフィニッシュ。兎にも角にもこうして波乱に富んだ2002年のCRTAアルテッツァレース参戦は笑顔のまま全日程を終了した。

1年間、ご声援ありがとうございました。来年も楽しくがんばります!

 最終戦富士フォトギャラリー

予選 

順位

車番

ドライバー

車 名 ベストタイム

1

1 佐々木 孝太 乱人MAXラムズALTEZZA 1'54.311

2

5 小林 敬一 五次元ネッツ神戸ALTEZZA 1'54.418

3

17 山本 将之 コクピット狭山アルテッツァ 1'55.357

11

10 菊地 靖 CRTA・STASH・アルテッツァ 1'56.436

25

36 青木 良介 CRTA・トムス・アルテッツァ 1'58.762

28

29 石原 邦夫 CRTA・トムス・アルテッツァ 2'00.480

32

13 正村 洋祐 CRTA・トムス・アルテッツァ 2'04.257
 

決勝 

順位

車番 ドライバー 車 名 周回 トップ差

1

17 山本 将之 コクピット狭山アルテッツァ 15 ---

2

1 佐々木 孝太 乱人MAXラムズALTEZZA 15 0'00.143

3

3 前嶋 秀司 サード・Mテックアルテッツァ 15 0'06.958

5

10 菊地 靖 CRTA・STASH・アルテッツァ 15 0'13.301

19

36 青木 良介 CRTA・トムス・アルテッツァ 15 1'12.054

23

13 正村 洋祐 CRTA・トムス・アルテッツァ 15 1'31.610

26

29 石原 邦夫 CRTA・トムス・アルテッツァ 14 1Lap


2002.3.3 TSUKUBA
2002.3.24 SUZUKA
2002.5.4 FISCO
2002.5.19 MOTEGI-Joy耐
2002.9.15 MOTEGI
2002.11.24 FISCO